心理学 psychology 2004 8 30
人間というものは、合理的な行動をします。
しかし、心理的な影響も大きいのです。
たとえば、それを、株式投資の売り買いの状況を示す「板情報」で見てみましょう。
売り 買い
76 164000
71 163000
38 162000
35 161000
28 160000
35 159000
158000 21
157000 31
156000 43
155000 63
154000 83
真ん中の数字が株価で、左右の数字が、売り買いの数量です。
こうした場合、売り方も、買い方も、決め手に欠きます。
これは、川を挟んで、敵と味方が、にらみ合っていて、
戦線が膠着状態になっていると言えるでしょう。
何もなければ、このまま、にらみ合ったまま、終わるでしょう。
ところが、日経平均株価が急上昇したとします。
こうなると、急に、買い方は強気なり、戦線を前進させます。
つまり、買い上がっていきます。
売り方にしてみれば、
日経平均株価が急上昇したので、売るのは、まだ早いと考えるでしょう。
さて、ここで、取り上げた銘柄は、内需系の「業績のよい銘柄」です。
そして、日経平均株価は、ハイテク株の株価の動向に、大きく左右されます。
ですから、この内需系の銘柄が、日経平均株価の影響を受けることは、おかしいのです。
たとえ日経平均株価が上がっても下がっても、この銘柄の業績には関係ないはずです。
しかし、現実には、日経平均株価の影響を受ける可能性があるのです。
このように、株式市場における「心理的な影響」は、意外にも大きいのです。
人間のなかで、比較的、合理的な行動をすると言われる投資家でも、
こうした心理的な影響を受けているのです。
やはり、経済学においても、人間の心理的な面を考慮しないと、
経済学が、神学論争になってしまいます。
経済学に、心理学か、あるいは行動科学を持ち込むべきです。
もうひとつ例を挙げましょう。
知人が、こう言っていました。
「業績がよく、成長性も高い銘柄があるのだが、株価が、さっぱり動かない。
投資指標も、割安を示しているのに、なぜだ。」
さて、その後、この銘柄は、どうなったか。
この銘柄は、ある有名な評論家が取り上げたことで、
急に、人気銘柄となり、株価が上昇して、
投資指標も、割安から、適正なレベルになりました。
このケースの場合は、
客観的に見れば、業績がよく、成長性も高く、投資指標も割安ですので、
株を買うことは、合理的な行動です。
しかし、株価が、さっぱり動かなかったのは、なぜか。
その理由は、この銘柄は昔から地味な銘柄で、なおかつ社名も地味ということでした。
ですから、株価の動きも、すごく地味でした。
ところが、ある有名な評論家が取り上げたことで、
「地味」から「有名」になってしまったのです。
しかし、この銘柄は、有名な評論家が取り上げても、取り上げなくても、
好業績という事実は、不変だったはずです。